Cloudflare vs AWS: 包括的なCDN、セキュリティ、サーバーレス機能比較

CloudflareとAmazon Web Services (AWS) は、どちらもコンテンツ配信ネットワーク (CDN) サービスを提供していますが、その提供範囲、機能、エコシステムには大きな違いがあります。本レポートでは、両社の主要サービス、特にCloudflareとAWS CloudFrontを中心に、DDoS保護、サーバーレスコンピューティング、ストレージなどの観点から比較し、それぞれの強みと弱みを深く掘り下げます。
💡 要点まとめ
- CloudflareはCDNとセキュリティ機能に特化し、シンプルでコスト予測がしやすいソリューションを提供します。特にDDoS対策は無料プランから強力です。
- AWSはCloudFrontを含む200以上の広範なサービスを提供し、他のAWSサービスとの深い統合と高いカスタマイズ性が魅力です。
- サーバーレスコンピューティングでは、Cloudflare Workersは低レイテンシーとコールドスタートの回避で優位性を示し、AWS Lambdaは多様な言語サポートと柔軟なリソース設定を提供します。
📊 専門家の評価
Cloudflare ⭐️ 8.8
AWS ⭐️ 8.5
比較表
| 機能 | Cloudflare | AWS | 勝者 |
|---|---|---|---|
| 主な焦点 | CDN、Webセキュリティ、エッジコンピューティング | 広範なクラウドサービス、インフラ、プラットフォーム | Cloudflare 🏆 |
| グローバルネットワークのリーチ | 335+都市、125+ヶ国、世界の95%人口を50msでカバー | 700+ PoPs、100+都市、50+ヶ国、900+埋め込みPoPs、245+国と地域で利用可能 | Cloudflare 🏆 |
| DDoS保護 | デフォルトで強力なDDoS対策、無料プランから利用可能 | AWS Shield Standardは無料(L3/L4)、高度なL7保護はAWS Shield Advanced(有料) | Cloudflare 🏆 |
| WAF (Web Application Firewall) | 設定が容易、ルールベース、機械学習、脅威インテリジェンスを統合 | 高度なカスタマイズ性、他のAWSサービスとの連携 | Cloudflare 🏆 |
| サーバーレスコンピューティング | Cloudflare Workers: コールドスタートなし、V8 Isolatesで高速実行、JavaScript/TypeScript/Python/Rust | AWS Lambda/Lambda@Edge: 多言語サポート、柔軟なリソース設定、AWSサービスとの深い連携 | Cloudflare 🏆 |
| オブジェクトストレージ | Cloudflare R2: S3互換、エグレス料金無料 | AWS S3: 業界をリードする可用性、セキュリティ、パフォーマンス、エグレス料金あり | Cloudflare 🏆 |
| エコシステムの統合 | CDNとセキュリティに特化、クラウドにとらわれない | 200以上のサービスを持つ広大なエコシステム、AWSサービスとの深い統合 | AWS 🏆 |
| 料金体系 | 無料プランが充実、固定料金プラン、コスト予測が容易 | 主に従量課金制(最近定額プランも追加)、複雑になりがち | Cloudflare 🏆 |
| 使いやすさ | 非AWSユーザーにとって設定・管理が容易 | AWSに慣れたユーザーにはシームレス、初心者には複雑な場合も | Cloudflare 🏆 |
🌍 市場での存在感
Cloudflare: CDN市場シェア79.9%、有料顧客26万5,929社以上 (個人開発者から大企業まで、特にWebサイトの高速化とセキュリティを重視する組織)
AWS: 世界No.1のクラウドプロバイダー、CDN市場でも主要なプレイヤー (AWSエコシステムを利用するあらゆる規模の企業、特に幅広いクラウドサービスを求める組織)
🗣️ ユーザーの感情
Cloudflare (⭐️ 8.7)
- 👍:
優れたパフォーマンスとウェブサイトの高速化
強力で費用対効果の高いDDoS保護
シンプルな管理と使いやすいインターフェース
手厚い無料プランと予測可能な料金体系
- 👎:
大規模なAWSのような統合されたエコシステムがない
無料プランではサポート体制が限定的である
AWS (⭐️ 8.2)
- 👍:
AWSの豊富なサービスとの深い統合
高いカスタマイズ性と柔軟性
グローバルに展開する広大なインフラストラクチャ
Lambda@Edgeによる高度なエッジコンピューティング機能
- 👎:
料金体系が複雑で予期せぬコストが発生する可能性
高度なセキュリティ機能が追加費用を伴う場合がある
非AWSユーザーにとっては学習曲線が急である
📢 最近の更新
Cloudflare:
- AIワークロードを実行するための「Workers AI」の提供開始
- ボットによるウェブサイトスクレイピングを防ぐツールの導入
- エグレス料金なしのオブジェクトストレージ「Cloudflare R2 Storage」の提供開始
- Pro/Businessプランの月払い料金の改定(年払いでは旧料金を維持)
AWS:
- CloudFrontのウェブサイト配信とセキュリティ用の定額料金プランを発表
- CloudFront Functionsで、エッジロケーションのメタデータ、未加工クエリ文字列の取得、高度なオリジンオーバーライドの3つの新機能がサポートされた
- EDoS攻撃対策としてAWS WAFでのレート制限・IPブロック設定の推奨が強調されている
長所と短所
Cloudflare
✅ 長所:
- ✅ 広範なグローバルネットワークと高速なコンテンツ配信能力
- ✅ 無料プランから利用可能な包括的なDDoS攻撃対策
- ✅ エグレス料金なしのオブジェクトストレージCloudflare R2
- ✅ シンプルな料金体系と予測可能なコスト
- ✅ 設定と管理が比較的容易で、クラウドにとらわれない設計
❌ 短所:
- ❌ 広範なAWSエコシステムのような多機能性はない
- ❌ Enterprise以外のサポートは限定的である
AWS
✅ 長所:
- ✅ 200以上のサービスを擁する広大なクラウドエコシステム
- ✅ 他のAWSサービスとのシームレスな統合と深い連携
- ✅ CloudFront Functionsによる高度なエッジコンピューティングのカスタマイズ性
- ✅ AWS Lambda@Edgeによる多様な言語サポートと柔軟なサーバーレス環境
❌ 短所:
- ❌ 料金体系が複雑で、コスト予測が難しい場合がある
- ❌ 高度なDDoS保護(Shield Advanced)は追加費用が必要
- ❌ 初心者や非AWSユーザーにはセットアップが複雑に感じられる場合がある
💰 料金プラン
| プラン | 価格 | 主な機能 |
|---|---|---|
| Cloudflare | ||
| Free プラン | 0円/月 | ✅ 無制限のDDoS攻撃対策 ✅ 共有SSL証明書 ✅ CDN ✅ 基本的なページルール (3つまで) ✅ DNS管理 |
| Pro プラン | 月額25ドル (年払い240ドル/年) | ✅ Freeプランの全機能 ✅ WAF (Web Application Firewall) ✅ 画像最適化 ✅ モバイル向け最適化 ✅ 20ページルール |
| Business プラン | 月額250ドル (年払い2400ドル/年) | ✅ Proプランの全機能 ✅ 高度なDDoS攻撃対策 ✅ カスタムSSL証明書アップロード ✅ 24時間365日メールサポート ✅ 50ページルール |
| Enterprise プラン | 個別見積もり | ✅ Businessプランの全機能 ✅ 専用SSL証明書 ✅ 高度なボット管理 ✅ 24時間365日電話サポート ✅ カスタムセキュリティルール |
| AWS | ||
| CloudFront 無料プラン | 0ドル/月 | ✅ データ転送 1TB/月 ✅ HTTP/HTTPSリクエスト 100万回/月 ✅ CloudFront Functionsの利用 |
| CloudFront Pro プラン (定額) | 月額15ドル | ✅ データ転送 50TB/月 ✅ HTTP/HTTPSリクエスト 1000万回/月 ✅ AWS WAF Standardの基本機能 |
| CloudFront Business プラン (定額) | 月額200ドル | ✅ データ転送 50TB/月 ✅ HTTP/HTTPSリクエスト 1.25億回/月 ✅ AWS WAF Standardの基本機能 |
| CloudFront Premium プラン (定額) | 月額1000ドル | ✅ データ転送 50TB/月 ✅ HTTP/HTTPSリクエスト 5億回/月 ✅ AWS WAF Standardの基本機能 |
| AWS Shield Advanced | 月額3,000ドル + 使用料 | ✅ L7 DDoS/EDoS対策 ✅ 高度な攻撃検出 ✅ 高額請求時の返金申請 |
| AWS WAF (従量課金) | Web ACLあたり月額5ドル + ルールごとに月額1ドル前後 | ✅ カスタマイズ可能なセキュリティルール ✅ IP制御 ✅ レート制限 |
詳細分析
グローバルネットワークとコンテンツ配信
Cloudflareは335以上の都市と125ヶ国以上に広がる広大なグローバルネットワークを有しており、世界の人口の約95%に50ミリ秒以内にリーチできると主張しています。これは、コンテンツをユーザーに最も近い場所から迅速に配信する上で大きな利点となります。CloudflareのCDNは、その広範なPoP (Point of Presence) を通じて、ウェブサイトのパフォーマンスと信頼性を向上させます。
AWS CloudFrontは、AWSの堅牢なグローバルインフラストラクチャの一部として、700以上のPoPを100以上の都市と50ヶ国以上に展開しています。さらに、300以上の都市に900以上の埋め込みPoPを持ち、245以上の国と地域をカバーするAWSのグローバルインフラストラクチャを活用します。CloudFrontはPoP、リージョナルエッジキャッシュ (REC)、埋め込みPoPの3つのインフラタイプを駆使し、コンテンツをユーザーに最大限に近づけることで、遅延を最小限に抑えます。
ネットワークの規模とリーチに関しては両者ともに非常に強力ですが、Cloudflareはより多くの都市と国で展開しているため、特定の地域でのユーザー体験においてわずかに優位性を持つ可能性があります。しかし、AWSの広大なインフラストラクチャと多層的なキャッシュ戦略も非常に効果的です。
DDoS攻撃対策とWebアプリケーションファイアウォール (WAF)
Cloudflareは、その自律的なDDoSシステムにより、デフォルトで強力なDDoS保護を提供します。無料プランであってもDDoS攻撃対策が含まれており、悪意のあるトラフィックの急増からネットワークを防御します。また、Cloudflare WAFは、ルールベースの検出、機械学習、脅威インテリジェンスを組み合わせて、一般的なWebアプリケーションの脆弱性から保護します。Cloudflare WAFは、設定が比較的容易であるという利点があります。
AWS CloudFrontも堅牢なDDoS保護を提供しますが、これは主にAWS Shieldサービスを通じて利用可能です。AWS Shield StandardはすべてのAWSユーザーに無料で提供され、インフラストラクチャ層(レイヤー3/4)のDDoS攻撃から保護します。より高度な保護、特にアプリケーション層(レイヤー7)のDDoS攻撃やEDoS(Economic Denial of Sustainability)攻撃に対する対策、および高額請求時の返金申請には、月額3,000ドルからの有料サービスであるAWS Shield Advancedが必要となります。AWS WAFは高度なカスタマイズオプションを提供しますが、Cloudflare WAFと比較して設定が複雑になる場合があります。
DDoS保護の即時性と包括性ではCloudflareに軍配が上がります。Cloudflareは無料プランから強力なDDoS対策を提供し、多くの組織にとって魅力的な選択肢です。AWSはより詳細なカスタマイズとAWSエコシステム全体との連携を提供しますが、高度な保護には追加コストがかかります。
サーバーレスエッジコンピューティング
Cloudflare Workersは、Chrome V8エンジン上で動作するサーバーレスコンピューティングプラットフォームで、JavaScript、TypeScript、Python、Rustなどの言語をサポートします。Workersの最大の特徴は、コールドスタートの問題がほぼなく、非常に低いレイテンシーでコードを実行できる点です。これにより、ユーザーに近いエッジで動的なコンテンツの処理やAPIリクエストの操作を高速に行うことが可能になります。
AWS Lambdaは、Java、Go、PowerShell、Node.js、Python、C#、Rubyなど、より幅広い言語をネイティブでサポートする汎用サーバーレスコンピューティングサービスです。Lambda@Edgeは、Lambda機能をCloudFrontのイベントに応答してエッジロケーションで実行することを可能にし、CDNと連携したカスタムロジックを実装できます。Lambdaはより柔軟なメモリと実行時間の設定が可能ですが、コールドスタートが発生する可能性があり、そのパフォーマンスはCloudflare Workersに劣る場合があります。
エッジでの高速な実行とコールドスタートの回避を重視するならばCloudflare Workersが優位です。一方、多様な言語サポートと他のAWSサービスとの深い連携、より複雑なロジックや長時間の処理が必要な場合はAWS Lambdaが適しています。
オブジェクトストレージ
Cloudflare R2は、S3互換のオブジェクトストレージサービスで、最も注目すべき特徴はエグレス料金(データ転送料金)が無料である点です。これは、大量のデータを頻繁に読み出すサービスにとって、大幅なコスト削減につながる可能性があります。R2はスケーラビリティとコスト効率に優れ、特にデータ転送コストが懸念される場合に魅力的な選択肢となります。
AWS S3は、業界をリードする可用性、セキュリティ、パフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。広範なストレージクラスとほぼ無制限のデータ保存能力を持ち、あらゆる規模や業界のビジネスに価値を提供します。しかし、S3からのデータ転送にはエグレス料金が発生するため、大量のデータを頻繁に配信する場合、総コストが高くなる可能性があります。
コスト削減、特にエグレス料金の回避が最優先事項であれば、Cloudflare R2が明確な勝者となります。一方、既存のAWSエコシステムとの深い統合や、極めて広範なストレージクラス、堅牢なデータ保護機能が必要な場合はAWS S3が依然として強力な選択肢です。
購入ガイド
クイック決断ガイド
- 小規模ウェブサイト/ブログ運営者 🌐: Cloudflare。充実した無料プランでCDN、基本的なセキュリティ機能を費用をかけずに利用できるため。
- セキュリティを最優先する企業 🛡️: Cloudflare。デフォルトで強力なDDoS保護が提供され、WAFも包括的で設定が容易なため。
- 既存のAWSエコシステムを利用中の企業 ☁️: AWS。他のAWSサービス(EC2、S3、Lambdaなど)との深い統合とシームレスな連携を最大限に活用できるため。
- 複雑なアプリケーション要件を持つ大規模企業 🚀: AWS。200以上の豊富なサービスと高いカスタマイズ性により、多様な要件に対応可能なため。
- コスト予測可能性を重視する企業 💰: Cloudflare。固定料金プランが多く、Cloudflare R2はエグレス料金が無料で予期せぬ高額請求のリスクを低減できるため。
🔄 代替案
- Akamai: エンタープライズ向けの高性能CDNおよびサイバーセキュリティソリューションを提供する業界リーダーです。
- Fastly: リアルタイムの制御とProgrammable Edge Cloudを提供する、開発者向けの高性能CDNです。
- Google Cloud CDN: Googleのグローバルネットワークを活用したCDNサービスで、Google Cloud Platformとの深い統合が特徴です。
- Azure CDN: Microsoft Azureのサービスの一部として提供されるCDNで、Azureエコシステムとの連携が強みです。
よくある質問 (FAQ)
CloudflareとAWS CloudFrontの主な違いは何ですか?
CloudflareはCDN、Webセキュリティ、エッジコンピューティングに特化した包括的なソリューションを、AWS CloudFrontはAWSの広範なクラウドサービスエコシステムの一部としてCDN機能を提供します。CloudflareはDDoS保護と料金の予測可能性で優れ、AWSは統合性とカスタマイズ性で強みを発揮します。
Cloudflare R2とAWS S3のどちらがデータストレージに適していますか?
エグレス料金(データ転送料金)を抑えたい場合は、エグレス料金が無料のCloudflare R2が優れた選択肢です。AWS S3は業界トップクラスの可用性と広範なサービス統合を提供しますが、データ転送には費用がかかります。
サーバーレス機能において、Cloudflare WorkersとAWS Lambda@Edgeはどちらが優れていますか?
コールドスタートを避け、低レイテンシーでの高速なエッジ実行を重視するならCloudflare Workersが優れています。多様なプログラミング言語のサポート、より複雑なロジック、他のAWSサービスとの深い連携が必要な場合はAWS Lambda@Edgeが適しています。
DDoS攻撃対策でCloudflareとAWS Shieldではどちらが優れていますか?
Cloudflareは無料プランから強力で包括的なDDoS攻撃対策を提供します。AWS Shield Standardは基本的なL3/L4保護を提供しますが、高度なL7保護やEDoS対策には、追加費用が発生するAWS Shield Advancedが必要です。
結論
Cloudflareは、CDN、Webセキュリティ、エッジコンピューティングに特化した、使いやすくコスト効率の高いソリューションを求める企業にとって、優れた選択肢です。特に、強力なDDoS対策とエグレス料金無料のストレージは大きな魅力です。一方、AWSは、CloudFrontを始めとする200以上のサービスを擁する広大なエコシステムを提供し、他のAWSサービスとのシームレスな統合と高度なカスタマイズを求める大規模な企業や、既存のAWSインフラストラクチャに深く依存している企業に適しています。特定の要件と既存のインフラストラクチャに応じて、どちらのプラットフォームも大きな価値を提供しますが、全体的な使いやすさ、コスト予測可能性、および無料プランの充実度を考慮すると、Cloudflareはより幅広いユーザーにとって魅力的な選択肢となるでしょう。
🔗 公式リンク
執筆: WhichBetter Editorial Team
📚 参考文献
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